数々の素敵なフォントを世に送り出していらっしゃるフロップデザインさんが主催されている、みんなで1文字づつ作って『平成最後のフォント』を作ろうプロジェクト。
私はカタカナの『ナ』で参加させていただいたので、完成までに考えたことや試行錯誤したことなどをまとめておこうと思います。
きっかけ
【平成の締めくくりにフォントを作りたい…けど一人で作るよりもみんなで力を合わせてフォントを1文字づつ作って、平成最後の瞬間にフォント公開したらきっと楽しいし思い出に残るはず!】
という面白い呼びかけがSNSで目に飛び込み、「私も一員となって文字作りたい!思い出も作りたい!」とワクワクしながら申し込みました。言ってしまえばフォント作りのお祭り…参加も条件さえ満たせば誰でもOK。いろんな方の頭の中をのぞくチャンス!思えば社会に出てからコンペなどではなく、一つの題材でみんなで一緒に何かを作るという作業がなかったのでは…?これは絶対に楽しいはず!(文化祭に参加するような気持ち)
担当は『ナ』
参加者一人一人に基本一文字振り分けられるのですが、私が担当することになった文字はカタカナの『ナ』。
「ナガノの『ナ』ですね」というお言葉も頂戴しましたので、ここはひとつ長野を絡めた『ナ』をメインにしようかと考えました。
しかし、思いの外ナガノの『ナ』難しい…^^;
個人的にナガノの『ナ』は長野県章のイメージがとても強く、アイデア出しの際に新しいものを生み出すのはとても難航しました…
よくお見かけするマークであることと、またそれが完成されたデザインでもあったので固執するよりも、自分が作って楽しいと思えそうな『ナ』の形をイメージを模索することに。(苦しまずに楽しむこと最優先)
作りたいものは何だろう?
今回は制作を楽しむことにも重きを置くことに決めたので、とにかくアイデア先行でカタカナの「ナ」から連想できるものをばぁーっと書き出しました。通常のお仕事では基本のコンセプトや背景を固めるてからラフを出したりするのですが、今回は完全に逆でしたね。まずはとにかく自由に!フリーダム!
そしてアイデアが膨らんできたところで、自分は今回制作するフォントに何を映したいか?を考えました。
- 平成のイメージは「平和、淡白、どこかに繋がっていないと不安」<客観>
- ターニングポイントがたくさんあった(就職、引っ越し、結婚、出産などなど)<主観>
- 『フォント』をつくりたい(他の文字展開も意識したい)
- できたらやっぱりナガノ的な要素もどこかに少し入れたい
『平成最後のフォント』という企画なので私にとっての『平成』についてもポイントに。割り当てられた文字の意味にこだわらず、自分がしたいことをするという方向も大切にしました。
今回は個人制作なので楽しい反面、制約がなさすぎるのもまた作りづらさを感じたというのも正直な感想です。でも貴重な時間であることにはかわりなく、何ものにも囚われす自由に思うがままペンやマウスを動かす楽しさを再認識。これからはもっと個人的な制作もやりたいな…
そしてここで完成データを納品して、次の連絡を待つことに。
β版をさわってみた!
数日後、全体の試作フォントが出来上がったとお知らせがあり、早速試し打ちをしてみることに。参加者みなさんそれぞれの文字への思い入れや、個性が光っていて、バラバラなんだけど文字の音まで聴こえてくるような、なんとも楽しい作品となっていました! (SNSなどでコンセプトシートを公開している方がたくさんいるので、それも見るのが楽しい♪)
さてさて、私の『ナ』はどうかな…と
あっ!出る!私の作った文字が出る!!(感動)
打ち文字として自分の制作した文字が出てくることにいたく感動してしまいました…
普段当たり前の様にお世話になっているいろいろなフォントもこうやって1文字づつ作っているのだな…と改めて文字作りをされている方へ敬意と感謝を感じずにはいられません。日本語はひらがな、カタカナ、アルファベット、数字、漢字(標準的なJIS第1水準漢字 : 2,965文字+JIS第2水準漢字 : 3,390文字(計約6,300の漢字))…気の遠くなる作業です…
違和感
ふと自分の制作した文字の違和感に気がつきました。おや?ちょっと形がゆがんでいるのでは…?
納品したデータと比べると歪んでいる…なぜだろうか…どうしてそうなってしまうのか原因を知るべく、データのフォント化を取りまとめをしてくださったフロップデザインさんにお伺いしてみました。
綺麗なパスで制作されていないデータは、フォント化の際に問題が起きるものが出てきてしまう場合があり、手動で直す必要があるそうで…
歪んでしまった原因→私のパスの作りが甘かった(猛省)
以下、お問い合わせさせていただいた際に綺麗なパスをつくる注意点を教えていただきました。
【フォント化の際の代表的な注意点】
- フォントはパスの回転方向を揃えなければいけない
- パスのねじれに対応できない
- パス同士が近かったり、重複があるとエラーになりやすい
- 先端の形状が、変わった処理だと、エラーが起こりやすい
- 抜きのある、複雑な文字はエラーになりやすい
- 完全に閉じたパスで無ければならない
勉強になります!!(自戒)
確かに歪んでいた部分はパスを引く際にも苦戦した箇所なのですが、このような事態を招くとは思っていませんでした…。綺麗なパスでないとフォントだけでなく、ロゴ制作などの際にエフェクトをかけた時に不具合が現れたり、扱いづらかったりするとのご指摘をいただいたので、改めて気を付けなければと襟を正す思いです。
参加してみて…
紆余曲折ありましたが最終的には企画に参加させていただけて本当によかったな〜と思いました。
文字一つをとっても制作者が違えば思いも違います。文字作りのゴールは同じでも制作プロセス・考え方などが違い、制作の裏側を見させていただく機会は少ないので、本当にたくさん刺激をいただきました!!「私もがんばらねば」と勝手に背中を押された思いです。
改めてフロップデザインさん、お忙しいところ丁寧なアドバイスをいただき本当にありがとうございました!フォント化の作業など…おつかれさまです。これからもお世話になりますー!(新作フォントいつも楽しみにしています)
フォント作りに参加された皆さま、平成の最後に一緒に文字作りの時間を共有できて嬉しかったです。ありがとうございました。
平成に思いを馳せつつ、令和で個性の塊なごちゃまぜフォントを楽しみましょう!
完成フォントはこちらからどうぞ
5月4日追記:4月30日に一般DLが開始されました。以下からどうぞ!